◆ はじめに ◆    

     今から40年前、アンテナ用にパンザーマストを建柱しました。(すべて「人力作業」でした)

     先日、偶然、この時の写真(ネガ)が見つかりました。

     そこで、これらの写真を紹介しながら、パンザーマストについて、お話しします。


       ◆お話は・・・、 1972年(昭和47年)9月にさかのぼります。

        ① 基礎の穴掘り
        ② マスト基礎部材の据え付け
        ③ コンクリート打設
        ④ マスト組立

        の順に進めます。

        古いお話で恐縮ですが・・・・パンザーマストは災害時にも活用できる特徴(長所)をもっています。(お役に立ちますよ)

  ◆完 成 後◆ 

 左が完成後・・・ アンテナを取り付け使用開始時点のものです。

 このマストは・・・・ R-011型で地上高は約15mです。
 0番は半部ほど切り詰めてあります。

 今から40年も前の作業でしたから・・・すべて「人力」でした。

 作業は、アマチュア無線の友人達でしたが・・・
 皆さんその道のプロ?でした。

 私はカメラマン。


  
        ★パンザーマストとは★

      パンザーマスト(Panzer Mast)は、甲冑・装甲柱の意の商品名で、新日本製鐵(株)がスイスから技術導入し
      我が国で初めて製造・販売を開始したようです。
      鋼板を管状にした部材を継ぎ合わせて、1本の柱にする鋼板組立柱です。
      各部材は2mの長さを持つ直円錐台形で、用途に応じて27mを最大にして、長短強弱の各種の柱を組立てる
      ことが可能です。

       新日本製鐵 パンザーマスト  ← クリック



         ★ 特 徴 ★ 

      1.美しい外観と広い用途

       パンザーマストは、景勝地や市街地にもマッチする、スマートな形と美しい外観を有しています。 

       パンザーマストは数々の優れた特長とそのシンプルな形によって、奥深い山中や都市の裏町の送配電通信用
       電柱から都会を彩る照明柱,アンテナ柱,防災行政無線柱等など、広い用途にもちいられています。

      2.建柱が簡単

       パンザーマストは自重が軽いだけでなく重心が根元に近く土壌との接触面積が大きいので、湿地や沼地を除き
       特別の基礎を必要としません。

       建柱に必要な用地が少なくて済みます。

       また建柱用具もほとんど必要とせず、短時間での建柱が可能です。

       基本的にパンザーマストを建柱する場所は、建柱車が入れない所です。

      3.軽量で輸送しやすい 

       重量は、同じ寸法強度のコンクリート柱に比べて約1/6と軽量。
       トラック1台にたくさんのパンザーマストを積むことができ運賃を削減できます。

      4.保管しやすい
       一番大きい部材の中へ順にその部材を納められる“入り子式”ですから、保管は小さなスペースで済みます。

       また、すべての部材の長さが2mですから、縦にして倉庫に入れますと場所の効率が増します。

      5.撤去・移設も容易

       建柱後も必要に応じて各構成部材を引き離し、分解することができます。
       従って、撤去・移設も他の電柱に比べ容易で、経済的に行えます。

      6.耐久性は・・・抜群の60年はもつ!

       全部の部材の、内外面に「溶融亜鉛メッキ」を施してありますので、長い耐用年数が見込まれます。

      7.劣化管理が容易

       錆などによる劣化管理は、外面だけで十分です。
       内面は外気に晒されず、亜鉛メッキが長持ちします。




         ★ 運 搬 ★

     前置きが長くなりました・・・・・写真をご覧下さい。

← 運搬は、こんなふうです。

 軽量で輸送しやすい
 
 重量は、同じ寸法強度のコンクリート柱に比べて約1/6と軽量。
 トラック1台にたくさんのパンザーマストを積むことができ運賃を
 削減できます。

 保管しやすい
 一番大きい部材の中へ順にその部材を納められる“入り子式”
 ですから、保管は小さなスペースで済みます。
 また、すべての部材の長さが2mですから、縦にして倉庫に入れ
 ますと場所の利用効率が増します。


        ★ 掘 削 ★

←掘削・据付け略図

 基礎穴の大きさは、1.5×1.5×2.5 [ m ] です。

 深さ2m以上ですので、崩壊の危険防止のために一辺は2段堀りにします。
 (法的には、更に土留支保工をします)

 基礎穴の底は水平にならし、砂利を敷きその上に栗石を並べます。
 栗石の上に砂を入れ鉄板を水平に敷きます。

 私の場合、地盤が古代の河川敷だったことから、栗石は使いませんでした。
 また、地盤が固く崩壊の危険性がないため「2段堀り」もしませんでした。


← 掘削開始

 1972年(昭和47年)9月23日土曜日(秋分の日)

 もと水田地のため表土は黒土でやわらか!


←穴底に変化が・・・?

 ほぼ、1m堀り進んだところです。砂が出てきました。


←木陰で休息・・疲れた!

 背丈ほどで・・・ツルハシ堀り。
 小石が混ざった川底です・・・スッコップは、役立たずです。 
 人影からお昼時です。
  9月23日は、残暑きびしく、柿の木陰で休息・・疲れた!


←地下水が湧出

 2mほどで地下水が湧出、溜まり始めました。大変だ!
 那須扇状地の伏流水で、みるみるうちに溜まります。

 排水ポンプの手配が必要です。近くの工務店から借用し
 明日、作業をすることになり・・・・・

 ここで、作業中止になりました。!!!!!!!



翌日、排水ポンプを借り受け・・・作業開始

  翌日(24日、日曜日)

  急遽のことでしたが、運良く排水ポンプを借り受けられ
  ・・・作業開始です。

  残り50cmです。ガンバレ!


←難工事・・・みんな・・・心配顔!

  掘ると言うより、石を剥がし取る・・・難工事です。

  みんな・・・心配顔!


←想定外の湧水量!

 排水ポンプもフル馬力・・・想定外の湧水量です。
 掘削は、バールで小石を剥がしバケツで吊りあげました。


←無事、掘削完了!
 基礎穴の周辺は、さながら河川敷のような残土です。

 やっとの事で、2.5mまで掘り、無事、掘削完了!


  【 穴掘りの 一人は穴に 大西日 】 (西日=夏の季語)



      ◆ このあと、基礎部材の据え付け穴埋め戻し地際型枠コンクリート打設と、進みました。



         ★据え付け★

      Point !   ◆これが、一番重要です◆
      ここで、垂直に建柱出来るようにレベルを見ます。
      仕上がりは、これによって左右されます。

垂直に建柱出来るようにレベルを見ます。

 残念なことに、この辺の「記録写真」が見つかりません! Sorry!

 コンクリートも手練りでした(約 0.3m^3 )

 この量では、生コン車は、出してくれませんから・・・。

 ◆基礎部は、堅牢に固定します。

 ◆埋戻しは、十分突き突き堅め、最後に、部材の上端で水平をチェックします。


         ★型枠&コン打設★

←根巻(ねまき)・・・・・養生(6日間)

 コンクリートの目的は・・・・・ 「根巻(ねまき)」ですから厳密な強度管理は
 しませんでした。

 コンクリート根巻まで、ほぼ1日がかりでした。
 陽射しも西日です。


      残暑きびしい1日・・・・・おつかれさまでした・・・コンクリート養生(6日間)→そして「型枠外し」・・・・・



         ★型枠外し★

     ↓ 6日後の昭和47年10月1日(日曜日)基礎部完成です。
        コンクリートの養生期間(6日間)後、型枠を外した状態。★Good !

←基礎部・・・完成 !
 このコンクリートは「根巻(ねまき)」といって、地際の腐食防止が
 目的です。

 パンザーマストは自重が軽いだけでなく重心が根元に近く土壌との
 接触面積が
 大きいので、湿地や沼地を除き、特別の基礎を必要としません。

 根巻の種類
  1.根巻無し
  2.部分根巻
  3.総根巻
  4.根枷(ねか)

 今回は「部分根巻」ですね・・・根枷なし。

 部分根巻コンクリートは・・・
 0.7×0.7×0.9 [ m ]の四角柱で、地上露出部は0.3 [ m ]です。

 マスト部材は・・・・

  9番部材: 亜鉛メッキが光っている部材です。
 10番部材: コンクリート基礎の上(黒色)です。
 11番部材: 最下部で、地中深く、見えません。 地中部の鋼管内部は
          空洞です。

 パンザ-マストは、0?11番迄の12種類の部材(長さはすべて2M)を
 順次継合せて1本の柱としました。
 20cm以上ラップ部があり、差し込んであるだけです。


         新日本製鐵 パンザーマスト ← クリック

      【参考】
     各部材は、シーム溶接による接合(縦の継目)

     パンザーマストの各部材の縦の継目は、ローラー電極で接合する部分を挟み、電極を連続的に回転させながら
     電流を通じて溶接すべき金属の内部抵抗と接触抵抗に基づく.発熱を利用して、圧接するラップシーム溶接により
     接合してあります

     接合には部材のサイズにより、一線接合(1番?8番)と二線接合(9?18番)があります。
     前者は1枚、後者は2枚の梯形の板から成り立っています。

     はじめに、鋼板を所定の寸法・形状に剪断し、成形機により円形(一線接合の場合)または、半円形(二線接合の場合)
     の断面に曲げます。

     一線接合は1回の溶接作業で、二線接合は2回の溶接作業で柱体ができ上がります。



         ★ 組 立 ★  ・・・・・一ヶ月後・・・・・

     昭和47年11月 3日(金曜日) (文化の日)
     いよいよ、組み立てです。
     晴れの特異日を選び・・・・吉日でした。

いよいよ、組み立て・・【台棒式建柱(だいぼう)】

 Point !
 立てる時の注意点として、基礎部の垂直は時間をかけ
 入念に、据え付けることです。

 それに、上と下の溶接面を合わせることです。
 これを怠ると柱体が曲がったり強度不足になり危険です。

 足場ボルトの位置が一直線に並べば大丈夫ですね。

 影からお昼時とわかります。


 この工法は【台棒式建柱(だいぼう)】と呼ばれています。

 当時、建柱車(クレーン車)は、1時間で4?5万円でした。
 月給の1/4は吹き飛んだように記憶してます。
 この資金で・・・・秋葉原で無線機部品を買い求めました。


      ◆ ここで、これからの手順を簡単に書きます ◆

       ① 台棒の先に滑車を付けてロープを通します。
       ② 9番部材に台棒の元を固定します。
       ③ ロープに8番部材をくくりつけて、ロープを引きます。
       ④ 人が上に登って9番部材に8番部材を差し込みます。
         そして、掛矢(かけや)でタタキ込みます。
       ⑤ 目印まで入ったら、台棒を8番部材にくくりつけます。
       ⑥ 次に7番部材を同じ要領で差込んで、上記を繰り返して0番部材まで組み上げます・・・これで完成です。

←パンザーマスト部材接合の勘所

 Point !

 ●この時のポイントは、鋼板継目(縦の線)を
  ピッタリと嵌合(かんごう)させることです。
  (はめ合わせる)




      Point ! 
      ●上記の作業中は、下げ振り(錘重)でマストの垂直を入念に確認しながら進めます。
        120°の3方向から確認。

     ↓ 台棒組立作業中 

←(安全対策をしっかりと・・・)

 【 参 考 】
◆ You Tube ( 動 画 ) 
 
 パンザマスト建柱例(You Tube) ←クリック一発
http://www.youtube.com/watch?v=jmV6VrGBalM




         ★ 完 成 ★   ( 11月 3日 )

     ↓ 完成直後・・・・台棒式建柱・・・・休息含め約5時間ほど。

       ●みんなで見上げ、「万歳三唱で・・・〆」

←組み立て完成直後

 ★作業安全の確保★

 ① 墜落防止の安全帯・ヘルメットの着用

 ② 工具落下防止の対策(紐付き)

 ③ 作業者の合図掛け合い

 ④ 十分な休息

 ⑤ 思いつき作業は厳禁(再打合せしてから・・・)

 ⑥ 天候悪化(風、雷など急変に注意します)


     ↓ 完成したマストの全景( 地上高 約15m )

       ★★ 美しい情景に、皆さん大満足でした ★★

←凛とした立ち姿!1972.11.03

 建柱自体は、意外と順調で3時間ほどで終わりました。
 ---
 接地抵抗の測定結果は、60Ωでした。
 10Ω以下が目標値でしたが、どうしても下がりません。

 10m長の埋設地線を2本追加しましたが、効果なしでした。
  Hint !

 ◆パンザーマスト自体を避雷針導体と過信するのは間違いです。
 ---
 雷電流を大地に流すには、定常抵抗値を低減しても、あまり効果がありません。
 すなわち、サージインピーダンスとして、検討するのが正解です。
 サージインピーダンスを低減する接地材が開発されておりますが・・・・・費用対効果
 の点で問題があります。
 ---
 専門的内容になりますので・・・・この辺にします。


         ★アンテナ設置★ 

     ↓ 年が変わり・・
       昭和48年 4月29日、日曜日 (昭和天皇誕生日)

←建柱後・・・ 6  (昭和48年4月)

 144MHzスタックと50MHzブラウンANT.の設置完了。

 後の衛星通信設備追加を考慮してローテーターを設置しました。


       【 友が手の建てしタワーに映ゆ旭日 】


          このあと・・・仕事の関係で・・・アマチュア無線は、休眠状態になりました (約10年間)


  

          ↓ 下の写真: 衛星通信が可能となった・・・・1999年頃
  
          ●アンテナは、50MHz?2400MHzまで設置。

          ●Trak Box で、人工衛星の自動追尾ができました。
           人工衛星QSO、リモートセンシング等は、好きな分野です。

在りし日のアンテナ群 
 
(2005年5月?6月撤去)

  このころから、アンテナ受風面積がパンザーの
  許容値を超え、台風襲来時にビクビクすることと
  なりました。

  それでも、釣り竿のように揺れながら強風に耐え
  抜くこと・・・・約15年・・・・

  そして設備縮小でANT.群は惜しみながら撤去し
  ました。
  パンザーマストは、現在も凛として立ってます。

                    参 考 事 項 



     【1】 パンザーマスト設置場所の選定

         隣接地、道路、などにアンテナ先端が上空侵犯しないか、電力線(離隔距離が必要)に接近しないか
         などを検討します。
         また、建柱・撤去、アンテナ取付の作業性も考慮し選定します。

         特に、高圧送電線は、風により接近し、絶縁距離が不足することを考慮してください。
         縄跳びのロープの揺れと同じです。
         接触しなくとも、感電します。
        (電力会社に相談すれば、計算してくれます。無料)

     【2】 パンザマストの強度計算(風速45&60m/s)
         私は、自分で手計算しましたが・・・・現在は、パンザーマスト製造元に依頼すれば計算してくれるそうです。

     【3】 受風面積計算

         パンザーマストに載せられるアンテナ、ローテーター、その他アンプ類などの受風面積を手計算しました。

         そして、パンザーマストの許容強度(安全率=2)を満足するかどうか?チェックしました。

     【4】 工作物確認申請(建築基準法)

         建築基準法で、地上高15m以上なら工作物確認申請が必要です。
         (地上高は、自治体で判断に違いがあるようです)

         市役所の担当課か、県の土木事務所に電話して聞けば、良く教えてくれます。

         私の場合・・・パンザーマスト本体のみの地上高が・・・15m未満ですので、工作物確認申請は不用でした。

     【5】 施設賠償保険などの加入

         任意ですが、JARL NEWSで案内している「アンテナ第三者賠償責任保険」などに加入されると
         万一不測の事故が発生した場合、自己負担に役立ちますね。
         ( 今は種々の損害保険がありますので二重に加入しないよう確認しましょう )

     【6】 解体・撤去作業・・・・

         専門工事業者に、依頼した方が安全。

         もし、高所作業車が入れない場合、台棒とシメラーで上部より1本ずつ引き抜き、地上に降ろす方法が
         一般的ですが・・・
         パンザーマスト建柱・撤去実績ある工事会社等に依頼した方が安全で、処分もしてくれ、得策です。

         引抜き解体は、2 ton以上の引っ張り力が必要です。

        Hint ! 
   
        地上に横倒しにしたパンザーマストを分離解体するのは、接続部に機械油(灯油でもOK)をたっぷり塗布
        しながら、木ハンマーでタタキしみ込ませ・・・・ 一晩放置しますと・・・・

        ステップボルトの付け根を叩けば、非常に簡単に分離できます。

        Point ! 
       分離後は、塗布した機械油を良く洗浄してください。



     ◆ You Tube ( 動 画 ) 
  
       パンザマスト建柱例(You Tube)  ←クリック一発
      http://www.youtube.com/watch?v=jmV6VrGBalM


      ◆ 解体・撤去の参考サイト ◆

     +++++++++++++++++++++

      パンザマスト(R215)の抜柱例  ←クリック一発
      http://www.geocities.jp/ja2fvaa/panzamasuto.htm

     +++++++++++++++++++++

      では、この辺で-eof-。。。




                                            【完】


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